「降圧薬をちゃんと飲んでいるのに、なんで血圧が全然下がらないんだろう…」
「血圧が高いって言われ続けて10年以上。薬を増やしても変わらなくて、もうどうしたらいいか…」
「塩分には気をつけているつもりなんだけど、それでも血圧が改善しないのはなんで?」
降圧薬を飲んでいるのに血圧が下がらない、あるいはなかなか安定しない、という状況って実はとても多いんです。
これを医学的には「難治性高血圧(抵抗性高血圧)」と呼びます。
薬が効かない原因のひとつとして、見過ごされがちなのが「食生活の問題」です。
「減塩しているのに下がらない」という人ほど、食事の中身を細かく見直す価値があるでしょう。
この記事では、難治性高血圧と食習慣の深い関係、そして血圧改善のカギになる食事の考え方について詳しく解説していきます。
なお、降圧薬は自己判断で減らしたりやめたりせず、食事の見直しは主治医と相談しながら進めてください。
降圧薬が効きにくくなる「難治性高血圧」とは何か

難治性高血圧とは、3種類以上の降圧薬を適切な用量で服用しているにもかかわらず、血圧が目標値(一般的に140/90mmHg未満)に達しない状態のことです。
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことで、庭のホースにたとえると「水圧」にあたります。
ホースが硬くなったり、流す水の量が増えたりすると、水圧はどんどん高くなっていくでしょう。
日本では高血圧患者が約4,300万人いると言われていますが、そのうち難治性高血圧と診断されるケースは全体の10〜30%とも言われています。
数としてはかなり多いんですよね。
薬が効かない主な原因
難治性高血圧には、さまざまな原因が絡み合っています。
- 二次性高血圧(腎臓病・甲状腺疾患・睡眠時無呼吸症候群など)が隠れている
- 薬の飲み忘れや服薬アドヒアランスの問題
- NSAIDs(痛み止め)・ステロイドなどの薬の影響
- 塩分・アルコール・カロリーの過剰摂取による食生活の問題
- 肥満・運動不足・慢性的なストレス
二次性高血圧とは、別の病気が原因となって血圧が上がっている状態のことです。
この場合は原因となっている病気の治療が優先になるため、主治医に「薬を飲んでも下がらない」ことを正直に伝えることがとても大切でしょう。
痛み止めなどの市販薬や、甘草を含む漢方薬、一部のサプリメントが血圧に影響することもあるため、飲んでいるものはすべて主治医や薬剤師に伝えておきましょう。
服薬アドヒアランスとは「処方どおりに薬を飲めているか」という意味で、飲み忘れが多いと薬本来の力を発揮できません。
このうち「食生活の問題」は、本人が気づいていないケースが非常に多いんです。
「減塩しているつもり」なのに実は十分に減っていなかったり、塩分以外の食習慣が血圧を押し上げていたりすることがあります。
「白衣高血圧」と「仮面高血圧」も要チェック
なお、診察室では正常なのに家では高い「仮面高血圧」や、逆に診察室では高くなる「白衣高血圧」といった状態もあります。
家庭血圧計で毎朝・毎晩の数値を記録することが、正確な把握への第一歩です。
記録したノートやアプリの画面を受診のときに見せれば、主治医も薬の調整をしやすくなるでしょう。
「効かないから」と自分で薬を減らしたりやめたりすると、血圧が急に上がって脳卒中や心臓の病気につながるおそれがあるため、絶対に避けてください。
「隠れた塩分」が降圧を邪魔している現実
高血圧の食事療法で最初に言われるのが「減塩」ですが、減塩がうまくいっていない人の多くは「隠れた塩分」を無視しています。
「料理に塩は使っていない」という方でも、加工食品・外食・調味料の塩分を合計すると驚くほど多いんです。
塩分をとりすぎると、体は血液中の塩分濃度を薄めようとして水分をため込み、ホースを流れる水の量そのものが増えてしまうわけですね。
隠れた塩分の代表例
- カップ麺1食:塩分5〜7g(1日の目標量6gの約83〜117%)
- 市販の梅干し(1個):約2g
- 焼き魚の干物(1枚):約2〜3g
- 市販のポン酢(大さじ1):約1g
- パン(食パン2枚):約1g
- ハムやウインナー(100g):約1.5〜2.5g
日本人の平均的な塩分摂取量は1日約10gとも言われていますが、高血圧の食事基準では6g未満が目標とされています。
倍近い塩分を摂っている計算になるんですよね。
今日からできる減塩のコツ
減塩は「味を薄くがまんする」ことではなく、「塩以外のおいしさを足す」ことだと考えると続けやすくなります。
- 麺類のスープは飲み干さず、半分以上残す
- しょうゆやソースは「かける」より「小皿につける」
- レモン・酢・しょうが・ねぎ・香辛料で風味をつける
- だしをしっかりとって、味噌汁は具だくさんにする
- 加工食品は栄養成分表示の「食塩相当量」を確認してから選ぶ
舌は続けるうちに少しずつ薄味に慣れていくので、最初の数週間が勝負だと思って取り組んでみてください。
家族と同じ食卓なら、取り分けたあとに自分だけ調味料を控えるなど、全員の味付けを変えなくてもできる工夫から始めると続けやすくなります。
塩分以外に血圧を上げる食習慣
実は塩分だけが問題ではありません。
高血圧の改善を妨げる食習慣として、精製糖質(白米・砂糖・菓子類)の過剰摂取が近年注目されています。
糖質を大量に摂るとインスリン抵抗性が進んで、腎臓でのナトリウム(塩分)再吸収が促進されるため、血圧が上がりやすくなります。
さらに、慢性的な高血糖や高インスリン血症は血管の炎症・硬化を引き起こし、血管の柔軟性が失われることで血圧をさらに上昇させるという悪循環が生まれます。
柔らかかったホースが古くなってカチカチになるように、血管も硬くなると圧力を逃がせなくなってしまうでしょう。
腸内環境の乱れも高血圧の原因になる

「高血圧と腸内環境?関係あるの?」と思うかもしれませんが、これが最新の研究で注目されているテーマです。
腸内細菌の乱れ(ディスバイオーシス)が高血圧のリスクを高めるという研究結果が、複数の論文で報告されています。
腸と血圧の意外なつながり
腸内細菌が食物繊維を発酵する際に「短鎖脂肪酸(SCFA)」を産生します。
この短鎖脂肪酸には血管を拡張したり、腎臓でのナトリウム排泄を促したりする働きがあるんです。
しかし、加工食品・砂糖・精製糖質が多く食物繊維が少ない食事が続くと、腸内細菌のバランスが崩れて短鎖脂肪酸の産生が減少します。
結果として、血圧が下がりにくい体になっていくというわけですね。
腸内細菌は、食物繊維というエサをもらって血管にやさしい物質を作ってくれる「小さな工場」のような存在だといえるでしょう。
工場にエサが届かなければ、血管を守る物質も作られなくなってしまいます。
野菜・海藻・きのこ・豆類・もち麦などで食物繊維をとり、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を組み合わせることが腸の工場を元気にする近道です。
アルコールと血圧の関係
お酒も血圧に大きな影響を与えます。
少量のアルコールは一時的に血管を広げる効果がありますが、習慣的な飲酒は交感神経を刺激して血圧を持続的に高めることが分かっています。
- 難治性高血圧の人でアルコールを飲んでいる場合、まず飲酒量の見直しが大切です。
- 飲む日は量を決め、休肝日をつくるなど、主治医と相談しながら無理のない範囲で減らしていくのが現実的でしょう。
- お酒と一緒に食べる塩辛いおつまみや、締めのラーメンも血圧を押し上げる原因になるので注意しましょう。
睡眠とストレスも血圧を左右する
睡眠不足や強いストレスが続くと、体を緊張させる交感神経が優位になり、血管が縮んで血圧が上がりやすくなります。
寝る前のスマホを控えて睡眠時間を確保したり、ゆっくり湯船につかったりするだけでも、体の緊張はほぐれやすくなるでしょう。
いびきが大きい、日中に強い眠気があるといった人は、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないか主治医に相談してみてください。
血圧改善に効果的な食事パターンとは
では、血圧を改善するためにはどんな食事が効果的なのでしょうか。
世界的に最も根拠のある食事パターンとして知られているのが「DASH食(高血圧を防ぐ食事アプローチ)」です。
DASH食の基本構成
- 野菜・果物を豊富に摂る(カリウム・マグネシウムが血圧を下げる)
- 全粒穀物・豆類・ナッツを積極的に食べる
- 低脂肪の乳製品・魚・鶏肉などを適量で
- 赤肉・甘い飲み物・砂糖・塩分を控える
- 食物繊維を意識的に増やす
研究では、DASH食を実践することで収縮期血圧が8〜14mmHg程度下がるという報告があります。
降圧薬1種類分に相当する効果とも言われていて、食事の力ってすごいなと改めて感じます。
カリウムは「天然の降圧剤」
DASH食で特に重要なのがカリウムの摂取です。
カリウムはナトリウムを体外に排出するのを助ける働きがあり、血圧を自然に下げる効果が期待できます。
体の中の余分な塩分を外へ運び出す「運搬係」のようなイメージでしょう。
カリウムが豊富な食品は、アボカド・ほうれん草・さつまいも・バナナ・豆類などです。
ただし、腎機能が低下している方はカリウムの摂りすぎに注意が必要なので、医師と相談しながら取り入れてください。
降圧薬の中にもカリウムの値に影響するものがあるため、サプリメントでカリウムを補う前には必ず主治医に確認しましょう。
和食で取り入れるDASH食の献立例
DASH食は欧米の食事パターンですが、和食の良さを生かせば日本の食卓にも取り入れやすくなります。
- 朝:雑穀ごはん・納豆・ほうれん草のおひたし・無糖ヨーグルトとバナナ
- 昼:鮭の塩焼き(減塩)・ひじき煮・具だくさん味噌汁は汁少なめ
- 夕:鶏むね肉と野菜の蒸し料理・豆腐とわかめの酢の物・さつまいも
漬物や佃煮、味噌汁の回数を少し減らすだけでも、和食の弱点である塩分を抑えられます。
果物はカリウムが豊富ですが、甘いジュースにすると糖質のとりすぎにつながるため、できるだけ生のまま食べるのがおすすめでしょう。
DASH食は「何か一つの食品で血圧を下げる」のではなく、食事全体のバランスで血管を守る考え方だと覚えておいてください。
難治性高血圧の人が見直したい「食べ方」と食事の時間帯

何を食べるかと同じくらい、「どう食べるか」「いつ食べるか」も血圧に影響します。
ここでは、食事の中身を変える前に見直しておきたい食べ方のポイントを紹介しましょう。
早食い・大食いをやめる
早食いをすると満腹のサインが脳に届く前に食べすぎてしまい、体重や血糖値が上がりやすくなります。
一口ごとに箸を置き、よく噛んで20分ほどかけて食べるだけでも、食べる量は自然と落ち着いていくでしょう。
体重が減ると心臓や血管への負担が軽くなるため、肥満がある人にとっては血圧を下げる大きな助けになります。
夜遅い食事を避ける
寝る直前に食事をすると、消化のために体が休まらず、睡眠の質が下がって翌朝の血圧にも影響しやすくなります。
夕食は寝る3時間前までに済ませるのを目標に、遅くなる日は量を軽めにしてみてください。
夜の時間帯に食べない時間を確保することは、そのまま無理のない空腹時間づくりにもつながるでしょう。
外食・コンビニでの選び方
- 外食では、ラーメンや丼ものなどの単品より、主菜と野菜の小鉢がそろった定食を選ぶのがおすすめです。
- コンビニなら、カップ麺や菓子パンの代わりに、サラダ・ゆで卵・焼き魚・無糖のお茶などを組み合わせると塩分と糖質を抑えられます。
- 商品を選ぶときに「食塩相当量」の表示を見る習慣をつけると、隠れた塩分に気づける場面がぐっと増えるでしょう。
家庭血圧と食事の記録をセットにする
朝と夜の血圧と一緒に、その日に食べたものを一行メモしておくと、「外食の翌朝は高い」といった自分のパターンが見えてきます。
血圧は季節や気温でも変わりやすく、冬は高めに出やすいことが知られています。
1日だけの数字に一喜一憂せず、1〜2週間の平均で変化を見るようにすると気持ちも楽になるでしょう。
この記録は、主治医が薬と生活習慣のどちらを調整すべきか判断するときの大切な材料にもなります。
食事とあわせて体を動かす
食事の見直しと一緒に取り入れたいのが、ウォーキングなどの軽い有酸素運動です。
体を動かすと血管がしなやかさを取り戻しやすくなり、インスリンの効きも良くなるため、食事改善の効果を後押ししてくれるでしょう。
食後に10〜15分ほど近所を歩くだけでも、血糖値の急上昇を抑える助けになります。
ただし、重いものを持ち上げるような息をこらえる運動は血圧を急に上げやすいので、始める前に主治医に相談してください。
難治性高血圧と食習慣改善についてよくある質問
食事改善の効果が血圧に現れるには、一般的に2〜4週間程度かかると言われています。
特に減塩の効果は比較的早く、1〜2週間で変化を感じる人もいますよ。
毎日記録をとりながら食事の変化を続けることで、何が効いているか分かりやすくなります。
焦らず継続することが大切です。
カフェインは一時的に血圧を上昇させることがあります。
ただし習慣的に飲んでいる人では耐性がついてきて、大きな影響が出ないケースも多いですね。
高血圧が気になる方は、1日2〜3杯程度に抑え、寝る前の摂取は避けるのが無難です。
複数の研究で、断食(ファスティング)が血圧の改善に貢献する可能性が示されています。
ファスティング中は食事由来の塩分・カロリー・糖質の摂取が減るため、血圧への負担が下がりますね。
また、体重減少・インスリン感受性の改善・交感神経の鎮静といった効果も重なって、血圧の安定につながるケースがあります。
難治性高血圧の方が取り組む際は、必ず医師と相談してから始めてください。
オメガ3系脂肪酸(青魚・亜麻仁油・えごま油などに含まれる)は血管の炎症を抑え、血圧にプラスの影響があると言われています。
一方、トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング・加工食品に多い)や飽和脂肪酸の過剰摂取は血管の健康を損ないやすいですね。
油の種類を意識するだけでも、血管環境が変わってきます。
食習慣から血圧を根本から整え、薬に頼りすぎない体をめざす

降圧薬を飲んでいても血圧が安定しない場合、まず見直すべきは「食事の質」です。
塩分だけでなく、糖質の質・腸内環境・食事の時間帯まで含めて見直すことで、薬だけでは動かなかった血圧が改善するケースがあります。
高血圧・肥満・血糖異常が連鎖するメタボの怖さについても知っておくと、改善への動機がさらに高まります。
今日から始められる血圧改善3ステップ
- 加工食品・インスタント食品を週2〜3回以下に減らす…隠れた塩分・糖質・トランス脂肪酸を一気に減らせる
- 野菜・海藻・豆類を毎食意識して増やす…カリウム・食物繊維で腸内環境と血圧を同時に整える
- 食事をとらない時間(空腹時間)を意識的につくる…16時間断食などで内臓を休ませ、インスリン・血圧の安定を促す
僕自身、ファスティングを習慣にしてから全体的に体の調子が上がって、血圧の数値も安定してきた感覚があります。
食事の時間を絞るだけで、これだけ変わるんだと実感したのを覚えています。
ただし、降圧薬を飲んでいる人が急に食事量を減らすと、血圧が下がりすぎてめまいやふらつきが起きることもあるため油断は禁物でしょう。
断食を始めるときは主治医に伝え、家庭血圧を測りながら12時間程度の短い空腹時間から試すのが安心でしょう。
空腹時間をつくるときも、食べる時間帯の食事内容が加工食品や塩辛いものばかりでは、血圧の改善は期待しにくくなります。
断食と減塩・野菜中心の食事をセットで続けることが、血管を休ませるいちばんの近道だと考えてください。
血圧が下がってきても、薬の量を減らすかどうかは必ず主治医が判断するものだと覚えておいてください。
難治性高血圧は「薬だけで何とかするもの」ではなく、「薬と並行して食習慣から根本的に見直せるもの」という視点を持つことが、改善の第一歩です。
まずは今日の食事から、少しずつ変えていきましょう。
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